次世代育成支援対策推進法(以下、次世代法)に基づき、一般事業主行動計画(以下、行動計画)を策定・実施し、計画に定めた目標を達成した場合等に、一定の基準を満たした事業主を認定する制度があります。事業主が申請することにより、認定基準に基づき、厚生労働省(都道府県労働局長に委任)が認定をします。認定を受けた事業主は、次世代認定マーク(愛称:くるみん)を広告、商品、求人広告などにつけ、子育てサポート企業であることを内外にアピールすることができます。認定及び表示の制度を活用することにより、子育てしながら働きやすい雇用環境の整備に取り組んでいることを広く周知することが容易となり、その結果、企業イメージの向上及び優秀な人材の確保、定着等を通じて、企業メリットを向上させることが期待できます。これからくるみんマークの取得を検討している場合は、申請することを念頭に置きつつ、計画の策定や実施を行うことは、認定申請をスムーズに進めるためにも必要です。
認定制度が開始された平成19年4月から企業のイメージアップを目指し、女性が多く働く企業などでは、一斉に次世代認定を視野に入れ雇用環境の整備に取り組みました。この数年で、いわゆる大企業では、認定マークを取得している企業が多くなり、以前よりも認定のメリットは薄れてきているという話も耳にします。優秀な人材の確保という点では、同業他社は認定マークをほとんど持っているということで、認定マークだけでは差別化は図れなくなりつつあるという理由のようです。
次世代法の改正に伴い101人以上300人以下の企業にも、この4月から行動計画の策定が義務となりますが、これから行動計画を策定し、認定を希望する場合には、認定を受けている企業は全体的にはまだ少数ということもあり、認定を目指して次世代育成支援対策を推進していくことが望まれます。認定マークは、優秀な人材の確保にメリットがあると言われていますが、大企業のように同業他社が持つことが当たり前となってしまってからでは、認定マークのメリットそれ自体は薄れてしまいます。目標を確実に実施し、他社に先駆けて認定を目指すことが重要になると思われます。
認定マークは、自社の商品やその広告、企業の封筒や名刺、ホームページなどに表示することが可能です。
【くるみんマーク活用例】
認定を受けるためには、行動計画の計画期間が終了し、下記の1から9の条件をすべて満たすことが必要です。認定を希望する場合には、行動計画を策定する段階からこれらの基準を踏まえることが重要です。
【留意点】
行動計画を都道府県労働局へ提出する際には、「認定を希望する」旨を伝え、認定を受けるために行動計画に盛り込むことが必要となる項目に漏れがないかを確認してください。
雇用環境の整備について、行動計画策定指針に照らし適切な一般事業主行動計画を策定したこと
認定を受けるためには、行動計画指針1「雇用環境の整備に関する項目」の(1)育児をする労働者等の職業生活と家庭生活の両立支援の整備又は(2)働き方の見直しに資する多様な労働条件の整備にあるような項目のうち、いずれか最低1つ、計画に盛り込み、目標を達成(認定基準3)していることが必要となります。
【留意点】
行動計画指針2「その他の次世代育成支援対策」(対象を自社の社員に限定しない、雇用環境の整備以外の取組み)は、雇用環境の整備に関する内容とはいえないため、これらの事項だけを内容とする行動計画を策定しても。認定の対象とはなりません。
行動計画の計画期間が、2年以上5年以下であること
企業等の実情を踏まえながら、経済社会環境の変化や社員のニーズ等も踏まえて行動計画を策定するには、計画期間は2年から5年が望ましいとされています。よって、行動計画の策定のみであれば計画期間を1年とすることも可能ですが、認定を受けるためには、2年以上であることが必要です。次世代法は平成27年(2015年)までの時限立法ですのでこれから行動計画を策定し、認定を希望する場合は計画期間の上限(5年)を気にする必要はないと思われます。次世代法は、平成27年3月31日限りで効力を失いますが、今後の次世代育成支援の状況によっては状況が変化する可能性もあるため今後の動きにも注意してください。
策定した一般事業主行動計画を実施し、それに定めた目標を達成したこと
認定を受けるためには、目標として行動計画に記載した内容を達成していなければなりません。認定を受ける際には、新旧の就業規則の写しなど達成したことを証明する資料の添付が必要となります。なお、行動計画提出の際には、所定の届出書のみの提出で足りますが、認定申請の際には行動計画自体の提出が必要となります。
【留意点】
育児休業等に関する社内様式(各申出書・通知書等)の整備も確認しておくとよいでしょう。
平成21年4月1日以降に新たに策定・変更した一般事業主行動計画について、公表及び従業員への周知を適切に行っていること
計画期間内に、男性の育児休業等取得者が1人以上いること
認定を受けるためには、計画期間内に男性従業員が1人以上、育児休業等(※)を取得していることが必要です。
中小企業にとっては、育児休業中の代替要員の確保等が難しいことやそもそも育児休業を取得する年齢の男性従業員がいない等様々な理由から、男性の育児休業者を出すことはハードルが高いものでした。そこで、従業員が300人以下の企業には、育児休業取得者の要件が緩和されました。
【従業員300人以下の場合の特例】
(1)計画期間内において、子の看護休暇を取得した男性従業員がいること。ただし、1歳に満たない子のために利用した場合を除きます。
(2)計画期間内において、小学校就学の始期に達するまでの子を養育する従業員に対する短時間勤務の制度の措置を利用した男性従業員がいること。
(3)当該計画の開始前3年以内の期間において、その雇用する男性従業員のうち育児休業等をしたものが1人以上いること。
計画期間内の女性従業員の育児休業取得率が70%以上であること
女性の育児休業等取得率=
計画期間内に育児休業等をした者の数/計画期間内に出産した者の数≧70%
⇒計画期間内に、育児休業取得者等が70%未満である300人以下の企業は、特例として計画開始前3年間遡り、計画期間とその開始前の一定期間(最長3年間※)を合わせて計算したときに、女性の育児休業等取得率が70%以上となれば要件を満たしているものとしてされます。
【従業員300人以下の場合の特例】
計画期間+計画期間開始日以前の最長3年以内に育児休業等をした者の数/出産した者の数≧70
⇒3年遡ると取得率が70%に満たない場合でも、2年であれば70%以上となるような場合は、2年分だけ遡って計算して取得率が70%以上になればよいことになります。
3歳から小学校に入学するまでの子を持つ従業員を対象とする「育児休業の制度または勤務時間の短縮等の措置に準ずる措置」を講じていること
次の(1)から(3)までのいずれかを実施していること
(1)所定外労働の削減のための措置
(2)年次有給休暇の取得の促進のための措置
(3)その他働き方の見直しに資する多様な労働条件の整備のための措置
子育て世代の男性を中心に、長時間労働の割合が高い水準で推移していることは前述のとおりですが、所定外労働は、本来、例外的な場合のみ行われるものであるという認識を浸透させることも重要です。
法及び法に基づく命令その他関係法令に違反する重大な事実がないこと
次世代法、男女雇用機会均等法、育児・介護休業法、労働基準法などの関係法令に違反する重大な事実がないことが必要です。計画期間中にこのようなことあった場合は、全ての目標を達成していたとしても認定は受けられません。
希望する時期に認定申請ができなかった例もあり、次世代育成推進対策を進めるにあたっては、関連する法律を遵守することが前提となります。
【違反例】
計画期間が満了し、目標を達成するなど、認定基準を満たしていれば、行動計画を策定・実施した都度、申請を行うことにより、その行動計画ごとに厚生労働大臣(都道府県労働局長に委任)の認定を受けることができます。認定申請書受理後、通常約30日程度で認定決定が行われます。広告、商品等につけることが可能な次世代認定マークは、認定決定通知書と共に電子媒体(CD-ROM)で送付されます。 認定は、行動計画ごとに認定が行われますので、第1期で認定を取得し、第2期目には認定を行わなかった場合でも、第1期目で取得した認定マークを引き続き使用することは可能です。