なぜ、勤務間インターバル制度が必要なのか

自分たちの職場は自分たちで良くしていく!

働き方改革の一環として、勤務間インターバル制度の導入が企業の努力義務とされています。これは、「労働時間等設定改善法」の改正によるものです。
改正当時は、「労働基準法」の改正だと思われていた企業も多くありました。

「労働時間等設定改善法」(正式名称:労働時間等の設定の改善に関する特別措置法)という法律は聞きなれないかもしれません。この法律は、事業主に労働時間等の設定の改善に向けた「自主的な努力」を促している」ところがポイントです。

「自分たちの職場は自分たちで良くしていく!」というが基本原則に沿って、
「勤務間インターバル制度を導入する目的は?」
「その制度を導入することで、どのような効果・メリットがあるのか?」
「どのような価値を提供できるのか?」

というところを、しっかり考えながら取組むいくことが重要です。

地球

法改正の背景

以下では、法改正の背景を2点挙げます。

1点目

長時間労働の是正や過労死等の対策が喫緊の課題とされていたこと

1.総務省労働力調査から
「月末1週間に60時間以上就業する雇用者数及び割合の推移」をみると、1990年(平成2年)はこの割合が15.9%(雇用者数753万人)にのぼっていました。その後も増加・減少を繰り返していますが、横ばい傾向が続き、過労死等の痛ましい出来事もなくならず、さらなる長時間労働是正や過労死等対策が強く求められていた点があります。

<最近の傾向(長時間労働)>
「月末1週間に60時間以上就業する雇用者数及び割合」
2021年(令和3年)は、割合は5.0%(雇用者数290万人)まで低下しています。勤務間インターバル制度制度の導入が努力義務となった2018年(平成30年)の割合は6.9%(雇用者数397万人)でしたので、減少傾向にあります。

⇒働き方改革の推進により、長時間労働の是正は着実に進んできています。

2.過労死等の状況について
 過重な仕事が原因で発症した脳・心臓疾患や、仕事による強いストレスが原因で発病した精神障害の状況について、令和3年度「過労死等の労災補償状況」によると、

請求件数は3,099件(前年度比264件の増加)、精神障害に関する請求件数は2,346件(前年度比295件の増加)、うち未遂を含む自殺の件数は前年度比16件増の171 件

⇒さらなる対策がなっています。

企業が押さえておきたい最近の動き

【2021年(昨年9月)改正事項】
「脳・心臓疾患の労災認定基準(令和3年(2021年)9月14日付け基発第0914第1号)」
労働時間「以外」の負荷要因が見直されました。
最新の医学的知見を踏まえたもので、勤務間インターバルが短い勤務(時間数・頻度・連続性等)が評価対象として追加され、労働時間と労働時間以外の負荷要因を総合評価して労災認定をすることが明確化されました。

※勤務間インターバルが短い勤務その程度(時間数、頻度、連続性等)や業務内容の観点から検討し、評価する。なお、勤務間インターバルがおおむね11時間未満の勤務の有無、時間数、頻度、連続性等について検討、評価する。

2点目

労使ともに「働き方」に関するニーズの変化が大きくなったこと

1.労働者のニーズの変化
 ライフステージにおいて(出産や育児や介護、病気との治療との両立や、本業以外での活動を通じたキャリア形成等も大切だと考えるようになり)、様々な事情を抱えながらもその事情に応じて自分にあった働き方を選択したいと、多様な働き方を志向する傾向が強くなりました。労働者のワーク・ライフ・バランスを実現することが、社会的な要請になってきたことも追い風になりました。

2.企業のニーズの変化
 長時間の労働是正などの法令順守の観点のみならず、労働者のウエルビーイングが高まることで、ワーク・エンゲージメント(企業に対する帰属意識)が向上し、企業業績や人的資本にもプラスの影響があることを、企業自らが実感し始めたことがあります。

例えば、
・統合報告書に、エンゲージメントスコアを公表して、それをどのように活用しているかを記載して、中長期ビジョンとの関係を対外的に、積極的に発信
・健康経営を基盤として、HP上に残業時間や年休取得率を公表
・2023年春から有価証券報告書に企業の人的資本の開示を義務づける方針が出されていますが、先駆けて、サスティナビリティ(持続可能性)情報、非財務情報として人的資本に関する目標と数値を公表

企業

なぜ、勤務間インターバル制度が必要なのか

労働者の「安全と健康」は絶対であり、労働者が持つその能力を最大限発揮することができる労働環境を整備することが、人材獲得競争が激化するなかでも、企業が持続して成長していくためには、不可欠であると考えるようになってきています。

労働時間規制は、何度も法改正を重ねてきましたが、時代の変化に合わせて「労働から解放された時間の確保」という視点が労働時間規制の新たな「役割」になってきているのです。

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最終更新日:2022.12.5

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