世界のワークライフバランス 

北欧とワークライフバランス

〜北欧4カ国旅紀行とともに〜

ストックホルム(スウエーデン)からヘルシンキ(フィンランド)へ向かうバルト海航行中、甲板から眺めた朝陽です。北欧は一日中太陽が沈まない白夜がある一方、冬場は一日中太陽が顔を出さないため、うつ症状が現れる人も多いそうです。太陽は北欧の人々にとって特別な存在なのでしょう。

ノルウェー、スウェーデン、デンマーク、フィンランド各国の旅紀行とともに、北欧諸国のワークライフバランスの様子をお届けします。

バルト海からの朝陽

基本情報

国土、気候、政体、人口構成、産業構造、労働法制・・・、日本と北欧の間には異なる点が多々あります。一方で、客観的に日本を見つめ直し、北欧から学ぶべき点が多いことにも気づかされます。

ノルウェー 国旗

ノルウェー王国(Kingdom of Norway)
人口:約505万人(2013年1月時点)
首都:オスロ
国旗:赤字に白い縁取りの紺十字

スウェーデン

スウェーデン王国(Kingdom of Sweden)
人口:約956万人(2013年1月時点)
首都:ストックホルム
国旗:青字に黄十字

デンマーク

デンマーク王国(Kingdom of Denmark)
人口:約560万人(2013年1月時点)
首都:コペンハーゲン
国旗:赤字に白十字

フィンランド

フィンランド共和国(Republic of Finland)
人口:約543万人(2012年12月時点)
首都:ヘルシンキ
国旗:白地に青十字。青は空と湖、白は雪を表す

日本

日本(Nippon、Nohon)
人口:約1億2,653万人(2012年時点)
首都:東京都
国旗:白地に赤丸

国際データ比較

20年以上前からワークライフバランス先進国として様々な施策を展開してきた北欧。ワークライフバランス先進国というよりも、男女平等施策を積極的に展開してきた「男女共同参画先進国」といった方が、より現状を表しているかもしれません。

ノルウェー
スウェーデン
デンマーク
フィンランド
日本
EU/OECD 非加盟/加盟 加盟/加盟 加盟/加盟 加盟/加盟 ―/加盟
世界幸福度調査 2位 5位 1位 7位 43位
ジェンダー・
ギャップ指数
3位 4位 8位 2位 105位
合計特殊出生率 1.9 1.9 1.9 1.9 1.4
女性就業率 82.1% 82.5% *** *** 69.2%
労働生産性
(時間あたり)
1位 11位 10位 14位 19位
年間総実労働時間 *** *** 1,446時間 1,578時間 1,747時間

男女平等政策を推進するノルウェー

政権交代
ノルウエー新聞

ノルウェー滞在中の9月9日、議会選挙が行われており、8年ぶりの政権交代のニュースを目にしました。10月発足予定の新政権では、ノルウエーでは17年ぶり2人目の女性首相が誕生する予定です。与党第1党(保守党)のエルナ・ソルベルグ氏が首相に、第2党(進歩党)のシーブ・イェンセン氏が財務相に就任し、第1党、第2党の女性指導者が枢要2ポストを占めるのではないかと伝えられています。翌日の新聞各紙の1面トップはどれもこのニュースで持ちきりで、「新首相は子育て中のお母さん」を印象づける家族写真を掲載している紙面もありました(右写真)。

クオーター制
ノルウエー議会

2004年の会社法改正により、公営企業及び民間企業のうち、株式上場企業に対して、取締役会におけるクオーター制が導入されました。クオーター制の発祥はノルウェーです。企業の規模により異なりますが、取締役が10人以上であればいずれの性別も4割を下回ってはならない、つまり上場企業などは4割以上を女性役員にする必要があるということになります。導入時には、男性への逆差別が生じるなどの反対論もあったようですが、現在は概ね定着し、北欧アイスランドやスペイン、フランス、オランダ、ベルギーでも導入されています。日本でも経済促進策として女性活躍推進が議論される中でクオーター制が話題にのぼることも多くなりました。写真(左)は、ノルウエーの国会議事堂です。

ノルウェーの未来
ノルウエーの森

ノルウエーでは、1978年に男女平等法が制定され、男女平等に関する基盤が築かれました。それから40年近い年月を経て、17年ぶりに女性首相が誕生する予定。国際結婚をし現地で40年以上暮らす日本人女性に、「女性首相の誕生によって、これからノルウエーは変わりますか?」と質問したところ、短く、そして力強く「変わる」という返事が返ってきました。6:4が4:6になる日も近いのではということも!ノルウエーの森の夜明けは、これからのノルウェーの新しい何かを示しているようにも見えました。

ボルグン・スターヴ教会
教会

スターヴ教会とは、北ヨーロッパ独特のスターヴヒルケと呼ばれる木造建築の教会です。11世紀から12世紀にかけて多くが建てられ、全盛期には1,000棟以上あったとされますが、現在は20数棟しか残っておらず、貴重な遺産となっています。ボルグン・スターヴ教会はフィヨルドの谷間に建つ1180年に建造された教会です。

ワークライフバランスを世界最高水準で実現するスウエーデン

高水準の女性議員登用
ストックホルム市庁舎

リクスダーゲンと呼ばれるスウエーデン議会は一院制。定数は349議席、そのうち約45%を女性議員が占めています。ワークライフバランスを世界最高水準で実現しているといわれるスウエーデンのワークライフバランス政策は、男女平等に重点を置き進められてきました。写真(右)は、毎年12月10日にノーベル賞受賞祝賀晩餐会や舞踏会が開かれるストックホルム市庁舎にある市庁舎の会議場です。非常に重厚な雰囲気が漂います。1人一人の席に名前が張られ、発言用マイクが備え付けられています。

高い女性就業率
女性専用部屋

スウエーデンは世界的にも高水準で女性の議員登用が進んでいますが、女性の就業率が非常に高いのも特徴です。OECDが公表した「雇用アウトルック2013」によると、25歳~54歳の女性の平均就業率は82.5%で加盟34か国中第1位です。これらを可能にしているのは、育児休業制度の充実、保育所サービスの充実、経済的インセンティブの付与、多様な働き方、柔軟な働き方が女性の社会進出を可能にしています。
写真(左)は、会議場のすぐ近くに設けらている女性専用の部屋です。男女平等意識の高いスウエーデン女性は、「女性ということで、なぜ私達が特別扱いをされなければならないんのですか?」と言ったそうです。私達にも問いが向けられ、「日本は男女平等な国だと思いますか?」と。40年以上スウエーデンに住む日本人男性からは、「日本ほど男女不平等な政策の国はない」と言われてしまったほどです。

アクティブな母親たち
ベビーカーを押す母親

スウェーデンでは、1954年には出産休暇を取得する女性に対して定額給付が行われていました。1990年代後半には1.5だった合計特殊出生率は、2007年には1.88まで上昇し、現在は1.9台まで回復しています。この写真(右)には、ベビーカーを押す3人の母親が写っています。出産間もない母親たちではないかと思われます。母親たちのファッションは、マラソンなどの際に腰やひざをガードするために使用するタイツを履き、ベビーカーを押す速度は速歩並、非常にアクティブな印象を受けました。スウエーデンは、1970年代以降、ワークライフバランス実現のためのさまざまな取組が始まりましたが、長い年月をかけて、世界最高水準のワークライフバランスの実現を手に入れたのです。

世界初のワークライフバランス法制

スウエーデンのワークライフバランス関連の法律には、”世界初”という施策が見られます。例えば、1974年に導入された「両親保険法」。世界ではじめて導入された父親・母親の両方が取得できる育児休業の所得補償制度です。支給期間は当初は両親あわせて6カ月間でしたが、現在は16カ月(480日)まで延長され、始めの390日については育児休業前の所得の約8割が保障されています。
1977年には「休暇法」が制定され、年間最低25日(5労働週」の有給休暇の付与が規定されています。欧州では長期連続休暇を取得する風土が根付いていますが、労使間の労働協約により法を上回る取り決めがされていおり、多くは6~7週間の連続休暇を取得することが一般的だそうです。

企業の高い法令順守意識
ビジネスマン

写真(左)は、スウエーデンの首都ストックホルムの旧市街で見かけたビジネスマンです。非常にスマートな印象を受けました。スウエーデンでは、企業の法令順守の意識が高く、また労使の関係は建設的かつ協調的、スウエーデン人の道徳観の高さもあり、サービス残業問題は起こりえないそうです。仕事と家庭の両立のために、労働時間の短縮も進められ、フレックスタイム制や在宅勤務制度など柔軟な働き方が行われています。早い人は午前7時~8時台には仕事をは開始し午後3時には帰宅する人もいます。午後3時10分すぎ、市街地の小学校から授業を終えた子供たちが一斉に下校していました。スーツ姿の父親、ラフなサンダル姿の父親たちと一緒に。男女ともに働き、柔軟な働き方が仕事と家庭の両立を支援しているのだと感じました。

ブルーホール
ブルーホール

ノーベル賞受賞祝賀晩餐会が開かれる市庁舎内にあるブルーホールです。現地では、今年のノーベル文学賞候補として日本人の作家の名前も挙げられていました。さて、いかに?!高窓からの採光が大広間を照らします。赤レンガの壁面は「敲き仕上げ」と呼ばれ、柔らかい音響効果をもち、コンサートや式典会場としても使用されています。

世界幸福度調査第1位はデンマーク

朝の通勤風景
朝の通勤風景

9月9日に公表された世界幸福度レポート(World Happiness Report)にのよると、世界で最も幸福度の高い国はデンマークでした。これは、2010年から2012年にかけて行われた調査で、世界156カ国を対象に実施されています。デンマークは、柔軟な雇用政策で仕事と家庭の両立を実現しています。写真(左)は、デンマークの首都コペンハーゲン市内の朝の通勤風景です。見渡すところ、自転車、自転車、自転車です。自転車は環境にもやさしく、北欧は自転車先進国としても知られていますが、これほどの数には驚きました。幸福度の高さと自転車先進国との関係は無縁ではないように思えました。

リヤカーママ

自転車先進国では、子供の頃から自転車の正しい乗り方を授業でも取り入れ、きちんとした教育がされています。自転車のスピードは競技自転車のような速度ですが、事故が少ないのはこのような取組の成果があるのです。リヤカー式の自転車(写真右)の荷台には、ヘルメットをかぶせた子供を乗せ、職場に向かうのです。現地の人に話を聞くと、一般的な朝の通勤風景だそうで、子供を保育園に送迎する際には、子供の洋服など荷物が多く、リアカータイプの自転車が好都合だそうです。柔軟な働き方ができるからこそ、朝や夕方の子供の送迎が、両親共々も可能であるとのことでした。

授乳室
授乳室

デンマークの首都コペンハーゲンにあるガストロップ国際空港内の授乳室です。10畳ほどの広さがあり、デンマークの手工芸品であるかわいらしいモビールが飾られていました。清潔感溢れる、とても明るいお部屋です。

ファミリールーム
子供用ipad

広大な敷地を有する空港は、乗継を待つ様々な国の人が行きかいます。家族連れも多くファミリールームが充実しています。「子供用お絵かき用iPad」のようなイメージの高度なIT機器も設置されていました。音楽に合わせて、お絵かきをすることができます。

教育水準が高いフィンランド

図書館利用率世界ナンバーワン
二人のパパ

世界教育水準ランキングでトップクラスのフィンランド。フィンランドの教育が一躍注目されるようになったのは、OECDが3年ごとに行っている世界の15歳を対象にした国際学習到達度調査(PISA)です。読解力、数学的リテラシー、科学的リテラシーなどの項目によって調査が行われます。フィンランドの読解力の高さは安定しており、図書館利用率世界第1位ということとも関係があるように感じました。現地に40年以上暮らす日本人男性の話によると、親が子供をどこかに連れて行く、というときに、まずは図書館だそうなのです。写真(右)の子供の年齢になる頃には、図書館は子供たちのお気に入りの場所になっているそうです。フィンランドの教育は、小学校5年生までは点数による評価は一切せず、「こういう考え方もあるよね」という子供ひとりひとりの考え方を大切にし、子供の良いところを伸ばす教育が行われています。図書館に慣れ親しんだ子供たちは、自分が興味を持ったことを自ら調べる術を身に付けており、学力の高さに結びついているのではないかということでした。このような教育を受けた教師たちの質も非常に高いということでした。
フィンランドといえば、一時は世界市場のトップに君臨した企業であるノキアが、携帯電話端末を米マイクロソフトに売却すると報じられたのはごく最近のことです。約3万人2千人のノキアの社員はマイクロソフトに転籍するそうですが、世界一の教育水準で育ったフィンランド人の社員たちの活躍が楽しみでもあります。

カッコイイ父親たち
双子のパパ

北欧の各国に共通した風景でしたが、写真(左)のように父親がベビーカーを押す姿が街のあちらこちらで見られました。”片手でベビーカーを押しながら運賃の支払いをするという利用者の困難な状況を考慮して安全を確保するため”という趣旨により1986年に導入された公共交通機関無料制度。ベビーカーに乗った子供とその利用者は無料でヘルシンキやその近郊の公共交通機関を利用することができます。VAT(付加価値税)24%の国の施策である、と終わらせることなく、我が国も税金の使い道について議論を深め、そして国民のチェック機能が重要であることを強く思いました。

ジェンダー・ギャップ指数2位のフィンランドと105位の日本

世界経済フォーラムが公表した男女平等の度合いを指数化したジェンダー・ギャップ指数(2013年)によると、フィンランドは2位にランキングされています。北欧4カ国の中では最も上位に位置しています。ジェンダー・ギャップ指数は、各国の女性の地位を、経済、教育、政治、健康の4分野で分析したものです。日本は3年連続順位を下げ、ジェンダー・ギャップ指数の発表がはじまった2006年以降の最低を更新しました。識字率や高校までの教育水準は世界1位にもかかわらず、ジェンダー・ヤップ指数105位の日本。今、何をしなければならないのか、何ができるのか、多くの課題を突きつけられているように感じました。

フィンランドデザイン
フィンランドデザイン

路地を一本入ると、お洒落なフィンランドデザインに出会えます。スモークサーモンとピンクのチェア。その上にお花が置かれ、絵はがきになりそうな風景です。フィンランドといえば、ムーミンの故郷でもあります。ムーミンはカバではありません!ムーミンは、普段は裸で生活していますが、寝るときはパジャマ、水泳をするときには水着に着替えるちょっと不思議なトロールという生き物です。

おわりに

「ここまで男女平等に皆が活躍できているのはなぜですか?」とデンマークに何十年も住む日本人男性に疑問をぶつけてみました。男性から帰ってきた言葉は、「国力を維持のためにどうすべきか皆がわかっている」という答えでした。デンマークの産業は、工業、農業、観光など様々ですが、小国でこれだけの国力を維持していくためには、男性も女性もともに働くことが、長い歴史の中で人々に染みついているのだというのです。ワークライフバランス施策に取り組むきっかけは、経済の急激な成長に伴う労働力不足であったり、国の財政危機であったりと様々でしたが、北欧各国ともに、長い年月をかけて『男女平等』のコンセンサスが形成されており、もはやワークライフバランスという言葉は似あわないようにも感じました。日本の『男女平等』コンセンサスの形成は、まさに「これから」です。
日本と共通していることは、高齢化への対応です。今回はあまり触れられませんでしたが、社会保障の充実は高負担によって支えられているということも肌で感じました。物価の高さは群を抜いていたノルウエーでは、付加価値税は25%(軽減税率あり)です。70代の女性の話によると、自治体が週に1回、街に高齢者を買い物に連れて行ってくれる「買い物サービス」を行っているそうです。この女性を含めた70代~90代の4人組の女性達は、このサービスを心待ちにしているということでした。サービスは利用されないとなくなってしまうので、”使い続けよう!”といつも話ているとのことでした。介護施設についても、高齢者の自立を妨げないように自立生活が可能な人は施設A、介助が必要になっ人にはすぐ隣の施設Bに移ることができるシステムもあるそうです。世界が注目する日本の高齢化への対応ですが、現地の人は日本の介護ビジネスにも関心を示していました。

北欧は驚きの連続でした。
そして、元気に走り回る子供たちの姿は、世界共通なのでした。

自転車

参考文献・データ
(独)労働政策研究・研修機構データブック国際労働比較2013
(独)労働政策研究・研修機構JILPT資料シリーズ№84
ノルウエー日本大使館「ノルウエーにおける男女平等政策」(2010.4)
世界保健機関「World Health Statistics 2013(世界保健統計)」(2013.5.15)
OECD「雇用アウトルック2013」(2013.7.16)
日本生産性本部「労働生産性の国際比較」(2012年版)
世界経済フォーラム(World Economic Forum)「The Global Gender Gap Report 2013」
フィンランド政府観光局facebook
地球の歩き方北欧2013~2014

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更新日:2013.10.01
更新日: 2013.10.28

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