イタリアと日本には、いくつかの共通点があります。四季がはっきりとしている点や南北に細長い地形である点、そして少子高齢化が進んでいることもその一つです。
合計特殊出生率 | 日 本 1.37(2009年) |
---|---|
イタリア 1.37(2007年) | |
老年人口 (65歳以上人口) |
日 本 21%(2005年) |
イタリア 20%(2005年) |
総務省の発表(2010年9月1日)によると、日本の老年人口は23%まで上昇しています。2050年には日本は37.8%、イタリアも33.3%と欧米先進諸国の中でも極めて老齢人口の割合の高い国になると予想されています。街から少し入った路地や、レストランで働く人などを見ても、若者よりも“シニア多し”という印象を受けました。
日本は就業者の8割超が「雇用者」です。一方、イタリアは「雇用者」は他国に比べて7割前後と低く、「自営業主」が2.5割前後と比較的大きなシェアを占めているのが特徴です。
※「雇用者」の定義・・・一般企業、官公庁などで賃金を得ている人
「自営業の定義」・・・人を雇用しているかいないにかかわらず自ら営業を行っている人
右写真は、ポンペイの遺跡です。ポンペイは、ローマをひざ頭とすると、すねあたりに位置するイタリア南部の都市です。西暦79年8月24日のヴェスヴィオ火山の大噴火によって火山礫と稗によって埋もれてしまいました。18世紀に入り発掘作業が進み、街全体が遺跡として残っているイタリアの世界遺産です。
上記写真は、ポンペイ遺跡の古代の自営業主(maybe!)。
イタリアに自営業主が多いことと結びついているのでは?と想像が膨らみます。
立派な窯、「パン屋さん」です。当時の窯がここまで鮮明な姿で残っていることには驚きました。
左写真は、何の看板だかわかりますか?
答えは、クロネコヤマトさんの祖先とでもいうのでしょうか、「運送屋さん」の看板です。他にも居酒屋や男性の遊び場まで残されていました。1900年前のポンペイの人々の暮らしは、さぞ活気に溢れていたのだろうと思います
現在、世界で登録されている世界遺産は911あります。そのうち、イタリアは断トツ1位の45。地理上イタリアに位置するヴァチカン市国とサン・マリーノ共和国も含めると47にもなります。
ヴァチカン市国は世界最小の独立国家ですので、イタリアの世界遺産ではありませんが、イタリア観光にははずせないスポットです。
サン・ピエトロ大聖堂には、ミケランジェロが23歳の時に制作した『ピエタ像』があります。
ミケランジェロは、生涯にいくつかの『ピエタ像』を遺しています。あまりの完成度の高さのため、制作を疑われたミケランジェロは、唯一この像(下記写真)の胸帯にサインを残しています。
ミケランジェロは、彫刻・絵画、建築と多彩な分野で活躍したルネッサンス時代の巨匠ですが、それゆえ困難もたくさんあったようです。以前、北里大学の公開講座で精神科の先生から伺った話ですが、ミケランジェロはうつ病を患っていたということなのです。
“うつ病”は、古代ローマ時代からあったのです。真面目、責任感が強い、稀なる才能と自分との葛藤。ミケランジェロの設計したサン・ピエトロ大聖堂の『クーポラ』、システィーナ礼拝堂の『最後の審判』など、多くの最高傑作といわれる作品を観ていると、ミケランジェロの苦悩というものは非常に深いものだったのだろうと思いました。
ミケランジェロ (Michelangelo, 1475-1564) は当時の教皇ユリウス2世の墓のための彫刻を作成するよう、教皇自身から依頼を受けました。仕事に完璧を望むミケランジェロは、この依頼に応じるため、8カ月間も山にこもって材料の大理石を探しました。その留守の間にこの仕事自体を他人にとられそうになったことから始まって、ユリウス2世の墓の仕事は多くのトラブルの中で延々20年以上続きます。教皇は亡くなり、後任者と契約金などの条件をめぐる問題も絶えませんでした。うつ病が発症したのはこうしたストレスのさなかでした。当時のミケランジェロは、「自分の能力ではこの仕事はできない、事実1日仕事したら4日休まなければ続けられない」とか、「自分以外の若い人でもっとこの仕事に適した人がいる」といった自信喪失を表わす手紙を書いています。
バカンスのために働くといわれるイタリア人。
イタリアと日本の年間休日数を比較してみます。(2008年)
週休休日 | 週休日以外の休日 | 年次有給休暇 | 計 | |
---|---|---|---|---|
日本 | 104 | 15 | 18 | 137 |
イタリア | 104 | 11 | 28 | 143 |
年次有給休暇は、労使協約で合意した平均付与日数ですが、日本とイタリアは10日も開きがあります。現在日本は年次有給休暇の取得率が47.1%(平成22年就労条件総合調査)と非常に低く、取得率を上げるということもワークライフバランスを推進するためにはポイントになると思います。
週休以外の休日に関しても、イタリアには州独自の祝祭日があり、休日がきちんと確保されています。12月25日はクリスマス、26日は聖ステファの日としての休日です。イタリアのクリスマスは、ドイツなど他の欧州の国々に比べて落ち着いているそうですが、キリストの誕生を祝う日と同時に、「家族と過ごす日」という本人達の意識が高いようです。日本も平成19年度から厚生労働省が「家族の日」を設定していますが、浸透するまでにはまだまだ時間がかかりそうです。※平成22年度の「家族の日」は、11月21日(日曜日)です。
会社は、朝8時半始業が多く、遅刻はごく普通だそうです。“1分や2分遅れたところで人生変わらないわ!”といった感覚。陽気なお国柄だと笑いましょう。一方、終業時間にはきっちり退社するそうです。“残業?ない、ない!残業なんかしたら変な目で見られてしまうわ”・・・と20年以上ローマに在住の女性が話してくれました。
労働生産性の国際比較を見ると、OECD加盟30か国中、日本は20位、先進7カ国中最下位です。一方、イタリアは7位。働けど、働けど成果が出ていない日本。生産性向上のために、イタリアに習って、“毎日がノー残業デー”から始めてみませんか?
多くの遺跡や彫刻など歴史的建造物が残るイタリア。これらの発掘・修復作業は専門的な知識と技術が必要であり、“技能の伝承”という面でも高齢化の問題が重くのしかかっているようです。また、イタリアの首都はローマですが経済の中心はミラノであり、南北の経済格差も大きな問題のようです。日本と同じような問題を抱えているイタリア。大好きなイタリアと日本、ともに元気な国であってほしいと思います。
参考文献:(独)労働政策研究・研修機構 国際労働データブック2010
総務省 平成17年国勢調査結果
(財)日本生産性本部 労働生産性国際比較2009年版
ワークライフバランス憲章行動指針