解説付!WLB事例集<経団連編2>

平成23年3月21日に社団法人日本経済団体連合会から公表された『企業のワークライフバランス取組み状況-ワーク・ライフ・バランス施策の推進に関する企業事例集』61社の中から注目企業20社の取組を紹介しています。解説付!WLB事例集<経団連編2>には、(11)〜(20)を取り上げています。

注目する企業の取組事例一覧
(11)全日本空輸㈱
(12)㈱ソニー
(13)㈱損害保険ジャパン
(14)㈱竹中工務店
(15)第一生命保険㈱
(16)大和証券グループ
(17)㈱ニチレイ
(18)㈱バンダイナムコホールディングス
(19)パナソニック(㈱
(20)東日本旅客鉄道㈱

注目する企業の取組事例(11)全日本空輸㈱

本格的な高齢社会を前に仕事と介護についての知識を学ぶ取組と業務改善への取組です。

【取組内容】

  • 介護セミナーの開催
  • チームミーティング(職場単位)実施による業務の棚卸しと情報共有

【解   説】

(1)急激な少子高齢化により、今後仕事をしながら介護を担う社員が急増することが予想されています。また、晩婚化により育児と介護を同時並行して担う社員もいるかもしれません。介護について正しい知識を早期にきちんと学ぶ機会を持つことで、来るべき介護時に慌てずにすみます。介護と向き合っていくには、事前の心構えと予備知識がの有無が大きく左右します。

(2)ワークライフバランスの実現には働き方の見直しが必要不可欠です。そのためには、不要な業務の廃止、業務プロセスの見直しなどの業務改革を行い、時間当たりの生産性を上げる必要があります。具体的には、(a)業務をオープンにして共有化すること、(b)たえざる業務改善(PDCAサイクル)することで、職場内で自分の時間だけでなく、同僚への思いやりの気持ちを大切にする機運が再認識され、職場のコミュニケーションの円滑化も期待することができます。

注目する企業の取組事例(12)㈱ソニー

男性の育児参画を支援する取組です。

【取組内容】

  • 20日間(有給)の育児休暇を付与。子の出生後8週間を境に、育児休職(※)との併用が可能
    ※子の満1歳到達到達後の4月15日までの育児休職制度の導入。子の出産後、8週間を境に男性は育児休暇との併用を可能とする制度
  • 育児をする男性社員を対象とした情報提供「ファーザーズフォーラム」の開催

【解   説】

(1)育児のための休職中は法的な所得保障が十分ではないため、男性社員が育児休職(休業)を取得することを躊躇するケースも少なくありません。全国的にも男性の育児休業取得率は低空飛行を続けており、取得した場合も数日〜1、2週間といった短期間が多いのが実情です。20日(約3週間)の有給での育児休暇を付与することで、所得減の心配は軽減されますし、また短期間でも育児に参画しようとする男性社員が増えることも期待できます。

(2)女性向けの育児情報は社会からも多く発信されていますが、男性向けの育児情報源は限られていることも少なくありません。育児に参画中の男性が一同に集まることで、情報共有が進み、ソフト面の支援が男性の育児参画を後押しすることが期待できます。

注目する企業の取組事例(13)㈱損保ジャパン

子供の成長に伴い、仕事のスタイルを柔軟に変更できる取組です。

【取組内容】

  • 妊娠中又は小学校3年生までの育児を担う社員は、一部就業時間の変更や短縮勤務が可能。シフト勤務や育児短時間勤務制度の11パターンから選択が可能。

【解   説】

子供が生まれた後も、保育園への入園、小1の壁、小3の壁、配偶者の協力体制の変化など、育児期間には子供の成長とともに、ライフスタイルの変化も伴います。その際に柔軟な勤務体制が可能なことは、社員の安心感にも大きく繋がります。企業としても、優秀な社員を育児を理由に手放さずにすむことが期待できます。

注目する企業の取組事例(14)㈱竹中工務店

女性の活躍を積極的に支援する取組です。

【取組内容】

  • 地域限定管理職制度の導入

【解   説】

男性社会と認識されがちな建設業界で、”女性の活躍支援は我社が模範に”という強いメッセージを発信しています。また、建設業界だけではなく、女性管理職比率を引き上げることは社会的な要請ともなっています。女性は家庭的責任の影響を受けやすく、転勤が難しいことで、昇進や昇給を妨げる要因にもなっています。地域を限定した管理職という従業員区分が明確なことで、女性社員も責任ある仕事に自らチャレンジする意欲も広がることが期待できます。

注目する企業の取組事例(15)第一生命㈱

労働時間短縮への取組です。

【取組内容】

  • 孫が誕生したときに特別休暇(有給)として3日間取得できる「誕生休暇制度」を導
  • 男性社員の短期間の育児休業取得への愛称「パパトレーニング育児休業」付与

【解   説】

(1)自らの育児時期には、今ほど法制度も企業制度も整備されていなかったであろう孫が生まれる社員世代には、心理的にも公平感を与える効果がある制度です。孫の誕生は誰もが嬉しいイベントですので、社会全体・企業全体で孫(子供)の誕生を喜ぶ機運を高め、少子化対策にも効果を期待したい取組です。

(2)ユニークな名称を付与することで、企業全体で男性の育児参画機運を高める効果が期待できます。

注目する企業の取組事例(16)大和証券グループ

労働時間短縮への取組です。

【取組内容】

  • 毎日19時前退社を励行

【解   説】

時間に対する意識の高まりが期待でき、無駄な業務の見直しなど業務の効率化が期待できる取組です。働き方の見直しにより生みだされた時間は、自己研鑽に励む社員が増え、ひいては能力を高めた社員の企業への貢献度も期待できます。

注目する企業の取組事例(17)㈱ニチレイ

固定的役割分業意識改善への取組です。

【取組内容】

  • 固定的役割分業意識是正のための役員向け情報提供(一般事業主行動計画に策定)

【解   説】

男女共同参画社会の実現には、従来の固定的役割分業意識の改善が不可欠です。役員クラスは、高度成長期の固定的役割分業がうまく機能してきた時代を駆け抜けてきた人も多く、それが一般常識だという意識を持っている場合も少なくありません。しかし、時代は変わりました。経営戦略としてのワークライフバランスセミナーを実施するなどして、上層部の意識改革に取り組むことはワークライフバランス実現への近道です。

注目する企業の取組事例(18)バンダイナムコホールディングス

ポジティブ・オフ運動への参加により休暇取得を促進する取組です。

【取組内容】

  • 観光庁主催のポジティブ・オフ運動への参加

【解   説】

ポジティブ・オフ運動とは、ビジネスパーソンが、オフ(休暇や勤務終了後の時間)をポジティブ(前向き)に捕え、外出や旅行、社会貢献や自己啓発などのオフの活動を楽しむことを積極的に推進する運動です。相互に影響するオンとオフを通じたライフの充実は企業の成長と社会の活性化にもつながります。社内でメールやポスターなどを通じて、積極的な休暇取得を促進することで、仕事の段取り力の向上、有給休暇取得率の向上なども期待できる取組です。

注目する企業の取組事例(19)パナソニック㈱

仕事と育児の両立を支援する取組です。

【取組内容】

  • 子どもが小学校に入学するまでの4月末までの間で希望する時期に730日(トータル2年)の育児休業取得が可能

【解   説】

育児期間中は、配偶者や両親の協力体制など各家族ごとに事情が異なり、一律に育児休業期間が定められているよりも社員にとっては、働き続けやすいことも少なくありません。育児休業期間の上限を定め、後は社員の希望する時期に育児休業取得を認めることで、社員にとって使い勝手のよい制度だと思われます。

注目する企業の取組事例(20)東日本旅客鉄道㈱

職種にかかわらず全社員に仕事と育児・介護との両立の選択肢を広げる取組です。

【取組内容】

  • 3歳までの子どもを持つ全ての社員に短時間勤務制度、短日数勤務制度を導入

【解   説】

現在、育児・介護休業法の改正により、短時間勤務制度の導入は企業に義務付けられていますが、ここで注目したいのは、365日稼働している鉄道業界で、職種により短時間シフトを組むことは難しいという概念を企業自ら払拭し、すべての社員の両立支援に企業全体で取り組んでいることです。既成概念を取り払うことには大きな決断や一時的に犠牲を伴うことも少なからずありますが、企業の全社員のワークライフバランスを支援するという強いメッセージを感じる取組です。

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