平成23年3月21日に社団法人日本経済団体連合会から『企業のワークライフバランス取組み状況-ワーク・ライフ・バランス施策の推進に関する企業事例集』が公表されました。
事例集には、61企業のワークライフバランス取組事例が紹介されています。その中で、独自の視点で注目した20企業の取組を解説付で紹介します。解説付!WLB事例集<経団連編1>には(1)〜(10)の10社の取組を紹介しています。
ワークライフバランス先進企業61社の共通した目的は業務上の生産性向上です。
注目する企業の取組事例一覧
(1)旭化成グループ
(2)㈱アドバンテッジリスクマネジメント
(3)伊藤忠商事㈱
(4)㈱アルテサロンホールディングス
(5)大垣信用金庫
(6)㈱資生堂
(7)清水建設㈱
(8)住友化学㈱
(9)住友林業㈱
(10)積水化学工業㈱
急速な高齢化により、今後介護を担う社員が急増することを見据えて、他の企業より一歩踏み込んだ仕事と介護の両立支援を行っています。
(1)コアタイム短縮のフレックスタイム制度の特徴
社員が出退勤の時刻を決められる最大の特徴であるフレックスタイム制を導入することに加えて、コアタイム(社員が労働しなければならない時間帯)の短縮により、さらに働き方の柔軟性が高められています。
(2)フルタイム勤務を原則とするメリット
介護のための短時間勤務制度は、ノーワークノーペイの原則により、社員の給与面への影響や、賞与や退職金、将来の年金への影響もあり得ます。
また、責任ある仕事を担う年代の仕事と介護の両立は、本人のキャリアへの影響も懸念されます。フルタイム勤務を前提とすることで、当たり前に仕事と介護の両立が実現可能となる取組への効果が期待されます。
(3)制度利用に期間を定めないメリット
育児と介護の大きな違いは、介護は終わりが見えないことです。ケースによっては、10年、20年と続きこともあります。期間を定めないことで、社員には安心感が生れ、会社としても優秀な社員を介護を理由として戦力から手放さなければならないリスクも抑えることが可能となります。
全社員が交代で休暇を取得できる体制に取組です。
(1)部署間での調整のメリット
お盆にかけての夏季休暇や年末年始にかけての冬季休暇に合わせて、有給休暇の取得を奨励する企業が多い中のが現状です。部署によってはその時期に休暇を取得することが困難な場合があります。同じ企業中でも、部署によって有給休暇の消化率の高低が著しい場合もあります。各部署での繁忙期等を優先させることで、一律有給休暇の消化傾向を薄めることが可能になり、全社員の有給休暇取得率向上が期待できます。
(2)全社員が有給休暇を取得できるメリット
ライフの充実はワークとの相乗効果をもらたすこことが期待されるだけでなく、業務のシェアは効率化につながることが期待できます。
有給休暇の取得促進を進める場合、仕事の進め方の見直し・効率化の推進が期待でき、働き方全体の見直しが可能となります。
技術習得のための深夜に及ぶ長時間労働を店舗設備の改良により抑制しようとした取組です。
(1)海外赴任者への支援のメリット(その1)
丸紅には正社員の2割にあたる約700人が海外赴任しているという商社ならではの特徴があります。社員には赴任時の介護への懸念が存在します。会社が社員の懸念を払拭する仕組みを導入することで、これを軽減することが期待できます。
(2)海外赴任者への支援のメリット(その2)
海外赴任者の不安を払拭することで、社員のパフォーマンス向上が期待でき、ひいては企業の生産性向上につながります。
技術習得のための深夜に及ぶ長時間労働を店舗設備の改良により抑制しようとした取組です。
(1)美容業界では徒弟制度的な慣行の下で、長時間労働や技術習得のために深夜まで練習等が行われることもあったが、ハード面の改良により、営業時間中でも繁閑に応じて、技術練習が可能となり、長時間労働の抑制、社員のワークライフバランス向上につながった取組です。
(2)土日等の繁忙期には社員全員が出勤して営業する体制を見直し、店舗ごとに定休日の設定、人繰りなどを行い、効率経営につながった取組です。
人事部が窓口になり、育児休業を全面的にバックアップする取組です。
(1)通勤時間や保育園のお迎え等で負担の多い社員もいるという問題点を把握し、人事部が窓口になり、復帰に向けての不安や悩み等のソフト面の問題点を直接把握し、企業として仕事と育児の両立を全面的にバックアップする取組です。
(2)原則として元の職場に復職していた流れを、通勤時間等本人の希望を考慮して復職時の配属先を決定し、社員のワークライフバランスを継続して支援する取組です。
働き方改革の一環として、昼食時間を利用し、男性の育児に関する情報交換の場を提供。
(1)男性の育児参加、家事分担促進をねらいに、昼食の時間を利用し、育児に関する情報交換の場を提供することで、女性に比べて育児の情報が少ない男性にも有益な時間の提供が可能な取組です。
(2)社内の昼食時間を利用ことで時間を有効利用でき、先輩育児休業者などの体験談を聞くことでより具体的な育児参加へのモチベーション向上と他部署の社員とのコミュニケーション促進も期待できる取組です。
多様な休暇制度の導入など労使一体でワークライフバランスを推進しています。
(1)お盆や年末年始などの世の中が休みの時期に建設現場の工事は行われることがしばしばです。企業内でも現場従事者だけが、有給取得率が低かったり、会社規定の休暇の取得が難しいという問題点を抱えているのもこの業界の特徴です。現場勤務者への配慮が感じられる取組です。
(2)ワークライフバランスの推進には、トップの明確なメッセージが効果を発揮します。しかし、労使一体で取り組むことでさらなるワークライフバランス推進が期待きます。また、労使は、意見が異なることもあり、定期的に協議の場を設けることで、さらに良好な労使関係の構築が期待できます。
より実効性のある育児休業期間を整備しています。
法定を上回る育児休業期間を認めています。年齢到達の年度末までの育児休業は多くの企業で実施されていますが、さらに4月末までの取得を認めています。これは、比較的入園しやすいといわれる4月の保育園入園後も、子供の慣らし保育期間中は育児休業を認めることで、保育園に慣れた子供を見届け、安心して会社復帰ができる環境づくりを支援している取組です。
ワークライフバランスの正しい知識普及に取り組んでいます。
(1)裁量労働制度は労働時間に自由度を持たせる制度ですが、時間だけでなく場所の自由度も高めることで、裁量労働に期待される効果がさらに高められ、労働時間削減にもつながる取組です。また、震災以後BCP(事業継続計画)の観点からも在宅勤務制度が見直されています。
(2)在宅勤務の問題点の一つである企業の情報漏洩の問題は、シンクライント端末の利用で対策を取っています。シンクライアント端末とは、パソコン端末にはハードディスクなどの記憶装置を持たないため、パソコンとアプリケーションを分離することができます。別の場所にあるサーバーで情報を一元管理するためにセキュリティ対策に有効です。
ワークライフバランスの正しい知識普及に取り組んでいます。
”ワークライフバランス=仕事はそこそこ”、”ワークとライフは50%-50%”、”男性には関係ない”などといったワークライフバランスへの先入観が社員に存在し、企業と社員との間で、制度利用をめぐり誤解や思惑のズレが生じることも少なくありません。全社員にワークライフバランスの正しい知識普及に取り組むことは、ワークライフバランス実現への近道です。
東京都と東京都立大学オープンユニバーシティは共催で時事的課題セミナーとして、『働き方・休み方改善セミナー』を開催されます。「休み方」にスポットをあて、勤務間インターバル制度などの紹介とともに、休息の重要性をお話します。
※このセミナーは東京都と東京都立大学のオープンユニバーシティが主催になります。東京都立大学オープンユニバーシティ2024年度秋期講座は全102もの多彩な講座が開講されます。「学びたい」ものを「学びたい」ときに。「知」を刺激して、「学ぶ」喜びを。