2008年の米大統領選で米国初の黒人大統領となった第44代オバマ大統領が居住し、執務を行うホワイトハウス(White House)。米国の首都ワシントンD.C.にあります。オバマ大統領は就任以来、経済危機やイラク問題、オバマケアに代表される医療制度改革などの課題と向き合ってきました。米国の大統領は最高で2期8年しか務めることができないため、2016年の次期大統領選の話題もしばしば聞かれました。
白亜の宮殿のような建物はアメリカ合衆国議会です。上院と下院の両院からなる二院制で、上院は定数100、任期は6年で、2年ごとに3分の1が改選されます。下院は定数435、2年ごとに全議員が改選されます。日本のように解散はありません。自動車のリコール問題でトヨタ社長が涙した公聴会が開かれたのもこちらです。ワシントンD.C.は昼間と夜の人口に大きな差があり、帰宅のラッシュ時には道路が大渋滞となることから、混雑回避のためにフレックス制を導入して朝6時から働き、午後3時には帰宅するといった人もいるそうです。
米国労働省です。米国にも日本と同じ最低賃金制度があります。最低賃金は、連邦最低賃金(根拠法:公正労働基準法)と州別最低賃金(根拠法:各州法)があり、現在連邦最低賃金は7.25ドル、最高額はワシントンの9.32ドルです。ワシントンD.C.は8.25ドルとニューヨークの8ドルに比べて高くなっています(2014年1月1日現在)。日本のように最低賃金を一定期間ごとに見直す等の定めはありません。州によっては最低賃金の定めがないところもあります。
連邦最低賃金の7.25ドルは日本の最低賃金の全国平均とおおおむね同水準です。格差是正へ最低賃金の引き上げを目指すオバマ大統領は、7.25ドルにとどまる連邦最低賃金を10.10ドルに引き上げる方針で、2014年4月25日にはホワイトハウスから声明が出されてています。州によって変動するものの、連邦最低賃金の引き上げは、最低賃金水準のフルタイム労働者の8か月分の家賃、36週間分の食料品代、108回分のガソリン満タン給油費用、66か月分の電気代に相当するとも言われています。アメリカで最も就業人口を支えているとされる小売業では、すでに最低賃金を引き上げる動きが広がっています。日本でもおなじみのイケアでは米国店舗従業員の最低賃金を平均17%上げ10.76ドルに、コストコでは現在11.00ドルの水準を11.50ドルまで引き上げるとしています。これは、競合他社に賃金で差をつけて、優秀な人材を確保し、顧客サービスを向上させることが狙いです。
しかし、最低賃金の引き上げの企業の動きは大手企業の一部にとどまります。最低賃金の適用者はすべての労働者ではなく、連邦最低賃金は年商50万ドル以上の企業であったり、州によっては小規模の小売業・サービス業等を提供除外としているところもあります。また、チップを受け取る労働者の最低賃金は低額にされることがあります。ファミリーレストランなどで働く労働者は時給300円位のところもあるそうで、チップは労働者の重要な生活の糧となっています。
米国の法定労働時間は1週40時間、時間外労働の上限規制は連邦法上の規定はなく、割増賃金率は50%とされされています。休日労働の割増賃金率の法令上の規定もありません。故意に違反した場合(40時間を超えて労働させた場合において1.5倍の割増賃金を支払わなかった場合)は、1万ドル以下の罰則又は6か月以下の禁固またはその両方が科されます。管理的被用者やベビーシッター、コンピューター関連職など適用除外も設けられています(根拠法:公正労働基準法)。米国の雇用者一人当たり平均年間総実労働時間は1,798時間(2012年)、労働時間の長さが指摘されている日本の総実労働時間1,765時間(2012年)と変わらない総実労働時間であることは、米国の賃金の低さと時間外労働規制がないことなども関係しているのではないか思われます。
ワシントンD.C.にあるアメリカの中央銀行にあたる連邦準備制度理事会(FRB)は全国の主要都市にある連邦準備銀行を統括する組織形態をとっています。現在のFRB議長は、100年のFRBの歴史で初の女性議長となったジャネット・イエレン氏です。このニューヨーク連邦準備銀行は連邦準備銀行の中でも最も重要な働きを担っています。金の貯蔵量は世界一、約7,000トンという量の金塊が地下の金庫室に保管されているそうです。
雇用平等委員会の報告書では、女性連邦職員について、「男女に賃金格差がある、女性管理職登用比率が低い、男女の機会均等を実現する意識が連邦政府機関に低い」などの課題を指摘し、依然として存在する女性連邦職員の働きにくさを報告しています。イエレン氏の活躍やアメリカに女性大統領が誕生する日が来るならば、アメリカ国民だけでなく世界中の女性たちが勇気づけられることでしょう。連邦準備銀行からたまたま出てきた女性・・・雰囲気、ファッションすべてに惚れ惚れする女性を見かけました。ニューヨークは、電気関係が地下を通っているため、何かあるとすぐに道路を掘り起こします。そのため、あちらこちらボコボコです。ニューヨークの女性は、ヒールは履かずにスニーカーなどで通勤し、オフィスで履き替えるのが普通だそうです。ですので、”ニューヨークの女性ではないな”、ということもわかるそうです。
世界中に影響を与えているニューヨーク証券取引所は米国最大の株式取引所です。トヨタ、キャノン、ソニーなどの外国企業を含む米国の大型優良企業や各国のグローバル企業が上場しています。1792年に24人の仲買人によってはじめられた伝統ある取引所で、上場審査は世界一厳しい言われています。この地に立つと、金融の中心地ニューヨークを感じます。時より足早に出口から出てくるビジネスパーソン達は、張りつめた空気をまとった独特の雰囲気があります。
昼時のウオール街にいると、多くのビジネスパーソン達とすれ違います。男性と女性が並んで歩き、そしてコミュニケーションを取る姿がとても印象的でした。人種のるつぼと言われ、グローバル都市指数第1位のニューヨークでは、100もの言語が飛び交っているそうです。基本的にお・も・て・な・しの”ない”国ですが、多様性を受け入れ、新しい社会を作り出していくパワーを感じずにはいられませんでした。
全就業者に占める女性の割合は、米国(47.0%)に比べて日本(42.3%)と就業者の割合が低いことがわかります。管理職に占める割合は、米国(43.7%)と比べると日本(11.1%)と著しく低水準にとどまっています。
日本 | 米国 | 英国 | 仏国 | スウエーデン | ノルウエー | |
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就業者 | 42.3 | 47.0 | 46.3 | 47.6 | 47.5 | 47.3 |
管理職 | 11.1 | 43.7 | 34.2 | 39.4 | 35.5 | 32.2 |
国内線で移動中、小さな女の子がipadでディズニーアニメ「アナと雪の女王」」を見ながら”レリゴ~レリゴ~”と歌い、飛行機の遅延などまったく気にならない様子に、アナ雪の世界的にヒットを感じました。また、複数の米誌が日本でのアナ雪大ブームを分析。劇中歌やキャスティングの評価とともに、先進国の中で就業率が低く、活躍の場を制限されている日本の女性が力強く自立したヒロイン像に引き付けられている」としており、大変興味深いものでした。
年休をはじめさまざまは休暇にかかる制定法上の規定は民間企業には存在せず、労働者へのインセンティブとして各企業が独自に様々は休暇を定め、また多くの労働協約において諸休暇が定められています。このバルーンネズミは「ただいま、労使交渉真っ最中!」の目印です。”かさぶただらけのネズミ”というニックネームがあるそうです。マンハッタンの街中で何度か目にしました。現地の方の話によると、頻繁にバルーンネズミが出現する会社もあるそうで、”またあの企業やってるなぁ”と思うそうです。今日はどんな労使の話し合いがされているのでしょうか!?
米国には児童手当制度は存在せず、税制上の対策として経済的な支援が図られています。例えば所得控除については、配偶者と19歳未満の子供を扶養している場合に適用されます。ニューヨークヤンキースで活躍中のマー君は今はお子さんがいないので(※)、かなり大きな高額の税金が取られているのではないか・・・という現地ネタも。大舞台で活躍する日本人選手を誇りに思います。ガンバレ、マー君!イチロー!
(※)2016年2月、マー君はパパになりました!
個人や自由が重んじられる米国では、その反面、自助努力が求められます。2003年には上院で、2008年には下院でそれぞれワークライフバランスにかかる決議が採択され、10月を全国仕事と家庭月間(National Work and family Month)とされたり、雇用機会均等委員会からは、介護や看護を行う従業員に対する差別を防ぐ事例集や法律違反となる事例集が発行されたそうです。しかし、当時はあまり積極的な展開はなかったようです。米国では家族生活上の問題に対しては政府は介入しないという態度が伝統的に取られてきました。
アメリカでは、妊娠・出産を理由とする差別の禁止を定めた妊娠差別禁止法(PDA)、障害を理由とする差別の禁止を定めた障害を持つアメリカ人法(ADA)、性を理由とする賃金差別を定めた同一賃金法(EPA)など差別禁止法制が多く存在します。一方、米国におけるワークライフバランスは、法的規制による展開というよりも、企業等組織における任意の取組によって行われてきているようです。
オバマ大統領はブログで、「柔軟性の高い勤務形態や家族休暇、保育制度、妥当な賃金は贅沢なサービスではない。基本的ニーズである」、「国の労働人口の多くが、仕事か家族か選ばなくてはいけないという状況は間違っている」とコメントしています。連邦政府の各機関に対して、柔軟性の高い勤務形態へのアクセスを拡大し、雇用者にそれを要求する権利を与えるよう指示する大統領覚書にサインをしたことも公表しています。米国も変わり始めています。任期満了までオバマ大統領頑張って!
米国の食文化としてすっかり定着した"sushi"。アメリカのお寿司もなかなかイケています。お米はカリフォルニアから、サーモンはアラスカ産、新鮮な魚介類の多くが近郊の海で水揚げされます。わざびはお好みで、しょうゆはkikkomanでした。そして今sushiに続くブームが起きているのが日本式ラーメンだそうです。ブームの発端はニューヨーク、今は米シカゴまで人気が波及中。米国人には音をたてて麺をすする習慣はありませんが、箸とレンゲを使ってズルズルっと美味しそうに麺をすするそうです。
参考文献
・労働政策研究報告書№116
・JILPT資料シリーズ№84
・JILPT2014国際労働比較
・地球の歩き方ニューヨーク2014~2015
・日本経済新聞記事
・HUFFPOST
更新日:2014年8月20日
更新日:2016年2月16日