イタリアでもワインの産地として名高いトスカーナ州。ワインの道『キャンティ街道』は、州のほぼ中心部フィレンチェからシエナに通じます。緑に囲まれた丘陵地帯には、ぶどう畑とオリーブ畑が隣り合い、壮大なパノラマビューが楽します。大自然のなかに身をゆだねると、忙しない日本での毎日が嘘のように感じます。ゆったりとした時間の流れが、心と体を癒してくれます。
周囲には多くのワイナリーがあり、宿泊施設やレストランが併設されています。まさに本場「アグルツーリズモ」を満喫することができます。ぶどう栽培とワインづくりはチームプロジェクト。この地でぶどう畑を持つことは名誉なこと。農家を経営するご家族を中心に、優秀で温かいハートを持ったメンバーが集まり、古代のワイン造りの伝統を守りながら、上質なワインを作り続けているそうです。ぶどうの収穫は手作業。収穫の時期は猫の手も借りたいそうです。
ワインは高価なものが美味しいとは限らず、ぶどうの当たり年に作られたものかどうかが本当に美味しいワインに出会えるかのポイント。ワインにはオーナーのご家族の名前が付けれており、嬉しそうにワインラベルを見せてくれました。愛情込めて作ったワインにご家族の名前をつっけるなんて素敵なのでしょう!”次に来るときには、アルバイトにおいでよ!食事付きだよ!”とオーナー(笑)
中世の雰囲気たっぷりで、どこか温かさを感じる佇まいの建物に入ると、テーブルの上には素敵にセッティングされたワイングラスが出迎えてくれました。オーナーご夫婦が、各テーブルを回り、「食事を楽しんでいるかい?!美味しいかい?!ワインはどれだけ飲んでも構わないよ!」と笑顔で話しかけてくれます。お料理は、愛情たっぷりの伝統的なビュッフェが振る舞われました。
キャンティ酢の玉ねぎに、畑で取れたオリーブ、どれもこの土地ならではです。天然ゴルゴンゾーラに地元産の蜂蜜を添えたチーズ。トスカーナ風味のハムにサラミにスパイシーサラミ。うどんのように太いパスタは、ピチ(Pici)と呼ばれ、トスカーナでは外せません。最後は、カントゥッチ(Cantucci)との呼ばれるハードビスケットに、甘いデザートワインにビスケットを浸していただきます。
フェラーリエンツォをはじめ世界的に活躍されている工業デザイナーの奥山清行氏は「イタリアのトスカーナ地方に1か月も滞在すると、帰りたくなくなる。日常が素晴らしいから、観光地に行かなくても、誰かの家に招かれるだけで最高のおもてなしだと感じる」とインタビューで話されていました。まさに、日本のツーリズムの可能性はここにあるのではないでしょうか。その土地に住む人にとっては当たり前の風景、そのような日常こそが大きな価値をもっているのです。「日本が持つ具体的な価値は”外から見て気づくもの”」、だとも奥山氏は話されていました。観光に訪れる人々の体験全体に対するクオリティの高いおもてなしをどれだけ提供できるか。GDPにおける観光の占める割合は世界平均が10.4%、日本は7%、まだまだ伸びる可能性が大きいのです。当たり前だと思っている日本の『日常』に、多くの外国人が魅力を感じるのでしょう、私がトスカーナで感じたように。
日本のファンを増やすことが、本当のツーリズム実現への近道になるのではないだろうかと日本を見つめ直す旅になりました。
Grazie!!!
参考資料:地球の歩き方2017~18
日経ビジネス№1987
更新日:2019年6月5日