[改正育児・介護休業法対応型]就業規則の整備
(中小企業編)

1 計画的に導入の準備を

平成21年6月24日に改正育児・介護休業法が成立し、一部を除き平成22年6月30日から施行されています。
平成22年6月30日時点で、常時100人以下の労働者を雇用する事業主については、平成24年6月30日までの間、一部の改正規定の適用が猶予されています。
制度を準備し、役所への届出、社員への制度の説明などにはある程度の時間が必要です。
余裕を持って準備を始めましょう。

2 短時間勤務制度導入への対応

子育て中の従業員からは短時間勤務制度の導入への期待は大きい半面、企業は人員が少なく、短時間勤務者ができる仕事をカバーしにくいために中小企業には導入が難しいとの声があります。また、短時間で働くとなると、賃金や人事制度の課題も多くあります。平成24年7月からは、100人以下の企業にも短時間勤務制度の導入が義務付けとなり、3歳未満の子どもを持つ社員が1日6時間勤務を望んだときは、企業は原則拒むことはできません。計画的に導入への準備を進める必要があります。働く時間が短縮される中で、いかに成果を上げ、本人のキャリアにもつなげていくかが短時間勤務制度のポイントになります。具体的には、勤務時間や時間帯に合った仕事の割り振りを明確にする必要があります。また、会議などは全員が勤務するコア時間帯に行うなど管理職のマネジメント力向上も重要になってきます。短時間勤務者の賃金は、仕事・役割・貢献度による評価を基本にし、本人の努力次第でキャリア形成の遅れを取り戻せる仕組みも必要です。短時間勤務者のみならず、多様な就労形態に応じた複線型の賃金制度への対応が今後企業には必要となるものと思われます。また、フルタイムの社員から短時間勤務者に対する不平等感が出たとしたら、職場に長時間労働が恒常化している可能性があります。働き方の無駄を省いて短時間で生産性の高い仕事を実現すること、そして職場の人間関係が気薄になっているといわれている今だからこそ、“お互い様精神”を大切にする職場の雰囲気を作り上げてください。

3 改正育児・介護休業法の概要

(1)介護休暇の創設

要介護状態にある対象家族の介護その他の厚生労働省令で定める世話を行う労働者は、事業主に申し出ることにより、要介護状態にある対象家族が1人の場合は年5日、2人以上の場合は10日を限度として、介護休暇を取得することができます。

(2)育児のための所定外労働時間の制限

3歳に満たない子を養育する労働者が請求した場合には、事業主は、その労働者を、所定外労働時間を超えて労働させてはなりません。

(3)3歳に満たない子を養育する労働者に対する短時間勤務制度の義務化

3歳に満たない子を養育する労働者について、労働者が希望すれば利用できる短時間勤務制度を設けることが義務付けられます。

(4)3歳未満に満たない子を養育する労働者に対する代替措置

上記(3)短時間勤務制度について、「業務の性質又は業務の実施体制に照らして、所定労働時間の短縮措置を講じることが困難と認められる業務に従事する労働者」として労使協定により除外された労働者に関して、育児休業に関する制度に準ずる措置又は「始業時刻変更等の措置(※)」を講じなければなりません。
※①フレックスタイム制度
 ②始業又は終業の時刻を繰上げ又は繰下げる制度(時差出勤制度)
 ③労働の3歳に満たない子に係る保育施設の設置運営その他これに準じる便宜の供与

<注意点>
上記(1)〜(4)以外の育児・介護休業法の改正規定については常時100人以下の労働者を雇用する事業主についても改正規定が適用されており、現時点で就業規則等の変更が必要となっています。

4 就業規則規定(例) 対象:すべての労働者の場合

(1)介護休業 

(介護休暇)

第○条

  1. 要介護状態にある家族その他の世話をする従業員(日雇従業員を除く)は、就業規則第○条に規定する年次有給休暇とは別に、当該家族が1人の場合は1年間に5日、2人以上の場合は1年間につき10日を限度として、介護休暇を取得することができる。
    この場合の1年間とは、4月1日から翌年3月31日までの期間とする。
  2. 介護休暇は、時間単位で取得することができる。
  3. 取得しようとする者は、原則として、事前に所属長に申し出るものとする。
  4. 給与、賞与、定期昇給及び退職金の算定にあたっては、取得期間は通常の勤務をしたものとみなす。

(2)育児のための所定外労働の免除

(育児のための所定外労働の免除)

第○条

  1. 3歳に満たない子を養育する従業員(日雇従業員を除く)が当該子を養育するために申し出た場合には、事業の正常な運営に支障がある場合を除き、所定労働時間を超えて労働をさせることはない。
  2. 申出をしようとする者は、1回につき、1か月以上1年以内の期間(以下、この条において「免除期間」という)について、免除を開始しようとする日(以下、この条において「免除開始予定日」という)及び免除を終了しようとする日を明らかにして、原則として、免除開始予定日の1か月前までに、育児のための所定外労働免除申出書(社内様式○)を所属長に提出するものとする。この場合において、免除期間は、次条第3項に規定する制限期間と重複しないようにしなければならない。
  3. 会社は、所定外労働免除申出書を受け取るに当たり、必要最小限度の各種証明書の提出を求めることがある。
  4. 申出の日後に申出に係る子が出生したときは、所定外労働免除申出書を提出した者(以下、この条において「申出者」という)は、出生後2週間以内に所属長に所定外労働免除対象児出生届(社内様式○)を提出しなければならない。
  5. 免除開始予定日の前日までに、申出に係る子の死亡等により申出者が子を養育しないこととなった場合には、申出はされなかったものとみなす。この場合において、申出者は、原則として当該事由が発生した日に、所属長にその旨を通知しなければならない。
  6. 次の各号に掲げるいずれかの事由が生じた場合には、免除期間は終了するものとし、当該免除期間の終了日は当該各号に掲げる日とする。
    (1)子の死亡等免除に係る子を養育しないこととなった場合  当該事由が発生した日
    (2)免除に係る子が3歳に達した場合  当該3歳に達した日
    (3)申出者について、産前産後休業、育児休業又は介護休業が始まった場合
                   産前産後休業、育児休業又は介護休業の開始日の前日
  7. 6(1)の事由が生じた場合には、申出者は原則として当該事由が生じた日に、所属長にその旨を通知しなければならない。

(3)育児短時間勤務

(育児短時間勤務)

第○条

  1. 3歳に満たない子を養育する従業員は、申し出ることにより、就業規則第○条の所定労働時間について、以下のように変更することができる。
    所定労働時間を午前9時から午後4時まで(うち休憩時間は、午前12時から午後1時ま
    での1時間とする)の6時間とする。
    (1歳に満たない子を育てる女性従業員は更に別途30分ずつ2回の育児時間を請求することができる)
  2. 1にかかわらず、日雇従業員及び1日の所定労働時間が6時間以下である従業員からの育児短時間勤務の申出は拒むことができる。
  3. 申出をしようとする者は、1回につき、1か月以上1年以内の期間について、短縮を開始しようとする日及び短縮を終了しようとする日を明らかにして、原則として、短縮開始予定日の1か月前までに、育児短時間勤務申出書(社内様式○)により所属長に申し出なければならない。申出が提出されたときは、会社は速やかに申出者に対し、育児短時間勤務取扱通知書(社内様式○)を交付する。その他適用のための手続きについては、第○条から第○条までの規定を準用する。
  4. 本制度の適用を受ける間の給与については、別途定める給与規定に基づく基本給を時間換算した額を基礎とした実労働時間分の基本給と諸手当の全額を支給する。
  5. 賞与については、その算定対象期間に本制度の適用を受ける期間がある場合においては、短縮した時間に対する賞与は支給しない。
  6. 定期昇給及び退職金の算定にあたっては、本制度の適用を受ける期間は通常の勤務をしているものとみなす。

(4)代替措置

(育児のための時差出勤の制度)

第○条

  1. 小学校就学の始期に達するまでの子を養育する従業員は、申し出ることにより、就業規則第○条の始業及び終業の時刻について、以下のように変更することができる。
    ・通常勤務=午前8時30分始業、午後5時30分終業
    ・時差出勤A=午前8時始業、午後5時終業
    ・時差出勤B=午前9時始業、午後6時終業
    ・時差出勤C=午前10時始業、午後7時終業
  2. 1にかかわらず日雇従業員からの育児のための時差出勤制度の申出は拒むことができる。
  3. 申出をしようとする者は、1回につき、1年以内の期間について、制度の適用を開始しようとする日及び終了しようとする日並びに時差出勤Aから時差出勤Cのいずれに変更するかを明らかにして、原則として適用開始予定日の1か月前までに、育児時差出勤申出書(社内様式○)により所属長に申出なければならない。申出書が提出されたときは、会社は速やかに申出者に対し、育児時差出勤取扱通知書(社内様式○)を交付する。その他適用のための手続等については、第○条から第○条までの規定を準用する。
  4. 本制度の適用を受ける間の給与及び賞与については、通常の勤務をしているものとして減額しない。
  5. 定期昇給及び退職金の算定に当たっては、本制度の適用を受ける期間は通常の勤務をしているものとみなす。

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