日本再生戦略としてのワークライフバランス

日本のプレゼンスを強化するために

国家戦略会議(2012年7月31日)にて、「日本再生戦略」が策定されました。11の成長戦略と38の重点施策で構成された内容には、[生活・雇用戦略]の中にワークライフバランスという言葉もしっかりと記されています。
ワークライフバランスが日本再生のための「戦略」として明確に位置づけられたことになります。

[生活・雇用戦略]
(中略)
働くことを通じて安心して生活できるようにするため、同一価値労働同一賃金に向けた均等・均等待遇やワークライフバランスの実現等により雇用の質の向上を図る。

また、様々な両立支援制度の施策が充実されてきているにもかかわらず、出産を機に退職する女性の割合が約7割とこの20年間ほとんどかわらない状況であることからも、出産前後での就業継続目標として、2020年までの目標および2015年度の中間目標が掲げられました。その他、ワークライフバランスに関連する各種数値も掲げられました。

2020年度までの目標
  • 第1子出産前後の女性の継続就業率 55%
  • 25歳~44歳までの女性就業率 73%
  • 男性の育児休業取得率 13%
  • 年次有給休暇取得率 70%
  • 週労働時間60時間以上の雇用者の割合5割減
  • メンタルヘルスに関する措置を受けられる職場の割合 100%
2015年度の中間目標
  • 第1子出産前後の女性の継続就業率 50%
  • 25歳~44歳までの女性就業率 69.8%
  • 男性の育児休業取得率 8%
  • 年次有給休暇取得率 59%
  • 週労働時間60時間以上の雇用者の割合7.4%
  • メンタルヘルスケア取組事業所割合 67%

働くなでしこ大作戦

日本再生戦略の策定と前後して、女性の活躍による経済活性化を推進する閣僚会議では『女性の活躍推進による経済活性化」行動計画~働く「なでしこ」大作戦~』(2012年6月22日)を策定しました。
これは、減少する労働力人口を補うという効果にとどまらず、新しい発想によるイノベーションを促し、様々な分野で経済を活性化させる力として「女性」を明確に位置づけました。行動計画には、日本に秘められている潜在力の最たるものこそ「女性」であると明記されています。

女性の活躍のためには、社会、特に男性の意識が変わらなければならない。一方で、意思決定の場における女性の参画が進まなければ、社会も変わらない。こうした状況を打ち破り、女性の活躍が社会や男性の意識を変え、それらの意識の変化が女性の活躍をさらに促すという好循環を導くためには、男性の意識改革と実質的な機会均等を実現するための説積極的改善措置(ポジティブ・アクション)を車の両輪として進めなければならない。

働くなでしこ大作戦のキーワード
  • 男性の意識改革(社会全体の意識改革を含む)
  • 思い切ったポジティブ・アクション

女性活躍推進とワークライフバランスは車の両輪

平成22年12月17日に閣議決定された第3次男女共同参画基本計画では女性管理職比率を2020年までに30%まで引き上げる目標が掲げられています。加えて、今回の日本再生戦略で積極的なポジティブアクションの推進が必要との方向性が明確にされたことにより、比較的短期間で女性活躍推進策が推し進められることは間違いありません。女性管理職比率をただ引き上げただけならば、比率は高まっても当の管理職の女性たちは息切れしてしまいます。女性活躍推進を推し進めるためには、ワークライフバランスの推進と車の両輪で行っていかなければなりません。女性の継続就業を後押しする施策の浸透、男性の意識改革、女性の意識改革、男女の賃金格差の是正、長時間労働の是正のための働き方の見直し、保育所の整備などハード面とソフト面の施策を総合的に推し進めていかなければなりません。ロールモデルの不在が叫ばれていますが、なかなか理想とするロールモデルなど現れるわけがありません。半歩先を歩く複数の女性の素晴らしいところを少しずつ吸収し、自分なりのロールモデルを作りあげればよいのではないかと思います。グローバル化がますます進む中で、日本の労働慣行も世界標準に合わせていく今は素晴らしいチャンスの時だと思います。

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