世界のワークライフバランス
~インド旅紀行とともに~

インドの異次元ダイバーシティ

はじめに

日本の9倍の面積を持ち、南アジアに位置する広大なインド亜大陸。現在、インドの総人口は、13億人を超えました(13億1,105万人:2015年データ)。中国を抜き、世界第1位の人口大国になるのも時間の問題です。インドが中国と大きく違うのは、人口ボーナス期にあるということです。人口の約半数が25歳以下の若年人口であり、合計特殊出生率は優に2を超えており、この傾向はこの先何十年と続くものと予想されています。公用語はヒンディー語で、他に憲法公認の21の州言語と844の方言があります。宗教は、インド人の8割を超える人がヒンデゥー教、ほかにはイスラーム教、キリスト教、仏教などあり、多種多様な民族が暮らしています。今まで見てきた欧米諸国とは全く異なるダイバーシティを感じました。

タージ・マハル

インドには、25の文化遺産と7つの自然遺産の合計32の世界遺産があります。写真(上)は、世界一美しい建造物と言われるタージ・マハル(Taj Mahal)です。ムガル帝国第5代皇帝シャー・ジャハーンが、愛する妻のために22年の歳月を費やして建てた白大理石の世界一豪華な墓です。インド国内のあちらこちらから、そして世界中から観光客が訪れ、にぎわいます。セキュリティチェックは、空港以上ではないかと思うほど厳しく行われます。
※工事中のタージ・マハルは滅多に見られません!

ターリー

インドで定食を意味する「ターリー」。何種類ものカレーが一度に食べられます。焼き立てのナンはお代わり自由、パリパリも食べ放題です。現地では、日本で見る巨大なナンには、一度もお目にかかりませんでした。日本人にはスプーンを添えてくれましたが、現地の人はスプーンを使いません。手で食べます!起用すぎます!そして、そしてカレーとラッシーって、どうしてこんなに相性が良いのでしょう!

大渋滞のデリー

デリーの交通渋滞

名目国内総生産(GDP)の成長率は10.5%、実質では7.3%(ともに2014年データ)と急激・急速な経済発展を続けるインド。反面、道路や鉄道、電力、上下水道などのインフラの整備がまったく追いついていません。首都ニューデリーの帰宅ラッシュの時間帯は大渋滞。まったく車が動きません(写真右)。勤務先まで2~3時間かけて通勤している人が珍しくないといい、4車線しかない車線は、どう数えても車は5車線並んでいました。人力車が語源となっているリクシャー(Rickshaw)と呼ばれる街の足の主役の三輪車も車とすれすれに走ります。その間を悠々と牛が歩いていたり、人が物を売りにきたり、JAFなんてありませんから、故障車は人がロープで引っ張ります。クラクションが鳴りまくり、もうなんでもありです!

今日を生き抜くために、働く

インドの住宅

インドの識字率は、7割強と言われています。学校に行ける子供たちは、おそらく、本当に限られているのではないかと思いました。ふと、サッカー日本代表の本田圭佑選手が、”子供たちが夢を持ち、自立できる機会を支援することが自らの使命”と課し、国連の教育事業へ協力するなどの教育者としての活動を思い出したのです。世界を見ている彼だからこその強い信念によるものだろうと思いました。インドでは、子供たちは【今日を生き抜くため】に働いています。夢や希望をもって学び、働けることがどんなに幸せなことか・・・。胸が熱くなりました。

人口の1/4が1日1.25ドル以下の収入で暮らす

インドの住宅2

急激な経済発展は、貧富の格差を広げていました。屋根のある住宅に住める人々は恵まれているほうで、田舎へ行けば行くほど、木々の下にテントを張り、火をおこし、食事を作る。空腹を満たすほどの食は到底難しいのではないだろうか、非常に過酷な生活をする人々を目の当たりにしました。首都の発展は目覚ましく、高層マンションの建設も進んでいましたが、そこに住めるにはほんの一部の富裕層と外国人、多くの人々の現実がここのあるのだと脳天を突き刺しました。

青空個人商店天国

インドの牛

首都ニューデリーでさえ、私達が想像するようなスーパーマーケットはありません。街の中は、床屋さん、八百屋さんなど多彩な青空個人商店天国です。そんな景色を横目に、牛が悠々と歩きまわります。”牛は神様の乗り物”、”神様も牛のミルクを飲んで大きくなった”などともいわれ、インドで牛は神聖な動物とされています。檻に入れたり、ロープでつないだりしません。日本の牛のように丸まると太った体はしておらず、牛も必死に生きていました。

笑顔

インディラ・ガーんディー国際空港

インド出入国の際、審査官と話が弾みました。”日本はどんなところだ?インドはどうだった?”と行きも帰りも次々と質問をしていきます。日本への関心がとても高いようでした。宗教上の関係から、初対面の人にインド人はなかなか笑顔を見せません。”2020年東京オリンピックが開かれる、ぜひ日本に来て!皆さんが私たちを歓迎してくれたように、私たちも歓迎する!”と伝えたら、レーンの中で一番気難しそうな審査官はとても嬉しそうな笑顔を見せてくれたのでした(写真右:インディラー・ガーンディ国際空港)。

おわりに

現在我が国は、インドに対する経済協力実績は第2位のドイツの2倍近い1,411.11万ドル世界第1位です(2013年)。日本とインドは「特別な戦略的グローバル・パートナーシップ」により、今後ますます両国の距離が近づいてくると思われます。急激な経済成長と都市化による社会的・環境的課題を抱えるインドに対して、日本は何ができか?資金援助のみならず、技術協力、産業人材の育成など多岐にわたると思います。

しかし、日本から指示を飛ばすだけではこれらは実現せず、現地で現地の人と一緒に汗をかき、信頼関係を築いていくことがとても重要になります。長期のプロジェクトになれば、技術者たちは、日本や家族と離れなければなりません。新興国の場合、現地の状況から家族が赴任に同行することは、なかなか難しいと思います。本人のワークライフバランス、そして家族のワークライフバランスに大きな影響が及びます。日本には優秀なそして熱い志を持った技術者がたくさんいます。そんな彼・彼女らやその家族のワークライフバランスを支援していきたい!!!と強く思ったのでした。

帰国後、インドのデータを調べていたところ、インドのジェンダーギャップ(男女平等)指数は145か国中108位、日本は101位です(2015年データ)。これしか差がないのか?!インドはまだまだ男尊女卑の傾向が色濃く残っている地域があり、農村などでは女性たちは家から自由に出られないこともあると聞きました。日本の恵まれた環境をあらためて実感していたところへ、この国際比較データのショックは大きく・・・。日本の女性活躍がいかに遅れているか・・・。頑張ろう、ニッポン!!!

マハラジャマック

世界各国のマクドナルドには、ご当地バーガーなるものがあり、インドのそれは「マハラジャバーガー」。宗教上の理由から牛肉が食べられない人にも、鶏肉のハンバーガーがあります。インドでマクドナルドは、”ファミリーレストラン”とされていますが、一部の富裕層しか利用できない現実。店内を走り回れる子供たちと店の外で物乞いをして必死に生きる子供たち。ここでも貧富の差の激しさを感じました。

参考文献
・Datebook of International Labour Statistics 国際労働比較2016(JILPT)
・地球の歩き方インド2015~2016(ダイヤモンド社)
・独立行政法人国際協力機構HP
・外務省HP
・インド統計局HP
・The Global Gender Gap Report 2015(WEF)

更新日:2016年8月19日

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