神々の世界といわれる『アンコール・ワット』。アンコール遺跡群は1992年12月に世界遺産に登録され、いまや年間300万人もの観光客が世界中から訪れます。カンボジア国旗にはアンコール・ワットが描かれ、紙幣には遺跡がデザインされています。カンボジア国家そのものであるアンコール・ワット。感動的なサンライズは、神々が目覚める瞬間と言われます。雨季(6月~10月)は雲がかかりやすく、美しいサンライズが見られるかどうかは神様に祈るしかありません。今なおミステリアスな謎が残されているアンコール・ワットの背後から昇る朝陽は、息をのむ美しさでした。
クメール語で「大きな都」を意味する『アンコール・トム』。アンコール王朝の最盛期を築いたといわれるジャヤヴァルマン7世が首都と定めた場所です。その中心に位置するのが、バイヨン寺院。アンコール・ワットの建造から半世紀後の1020年頃から建造が始まったといわれています。クメール人の独特の宇宙観が、まさに王と神の都市を彷彿させます。迷路のような回廊には、戦争、生贄の儀式の様子、漁や狩り、炊事などの人々の生活、相撲やレスリングの様子、なんと出産の様子まで、非常にいきいきとした人々や動物の表情が壁面に刻まれています。アンコール・トムの中央には、巨大な四面仏頭の観音菩薩像が微笑みを浮かべています。時空を超えて、観音菩薩像と何か会話をしているような気持になりました。心が穏やかになる時間でした。
世界で進む脱プラ。海洋に流失したり投棄されたりしたプラスチックを飲みこんでしまい、傷ついた動物の姿がたびたび報道されています。カンボジアの隣国タイでは、海岸で迷子になって地元当局に保護されていた愛くるしいジュゴンの赤ちゃんがプラスチック誤飲が引き金となり亡くなったそう。日本でもストロー類の紙製への転換が急速に進んでいますが、これはマンゴースムージーについてきた「竹」のストロー。繰り返し使用ができ、とにかく”しっかり者”なのです。時代の先端をいくエコ!エコ!カンボジア!
”日本は、お金だけ出している”と言われてしまうことがありますが、現地では、”日本は無償で医療が受けられる小児病院を建ててくれた!”、”日本は内戦で肢を失った私の故郷の人の義足を作ってくれた!”など、日本に感謝している!という話をたくさん聞くことができました。カンボジアでは全ての子供たちが十分な教育を受けることができません。日本の草野の根の活動により学校が建設され、多くの子供たちが学校へ通うことができるようになったそうです。これは、地方の小学校ですが、実際に日本が建てた学校を見ることができました。質素な校舎でしたが、校庭を走り回る子供たちの元気な声と笑顔は世界共通!日本のODAも、当初は食料援助や都市整備、感染症の予防医療などの分野が多かったようですが、近年では教員養成大学建設計画により、質の高い教員の養成を通じた基礎教育の質の改善にも寄与しているそうです。わが日本を誇らしく思いました。
パームシュガー、ココナッツミルク、タピオカ粉、卵、塩で作るカンボジアの伝統的な焼き菓子「ノム・トム・ムーン」。日本のクレープのような鉄板を使って、カンボジア人の女性たちが器用に製造していました。カンボジアの女性たちの手に職をつけてもらい、経済的な自立支援にもつなげる、まさに”SDGs×ビジネス”です。アツアツ&サクサクの出来立てを食べられるのは現地ならでは!
アンコール・ワットから東へ直線距離で約50㎞、車中で始終スペースマウンテンに乗っているような揺れに耐えると、『ベン・メリア遺跡』があります。宮崎駿監督のアニメ「天空の城ラピュタ」のモデルになったと言われています。遺跡は自然の風化でかなり崩壊しており、遺跡群の全容がまだ解明されていない神秘の場所です。木々が生い茂り、ひんやりとした不思議な《気》を感じます。国全体がパワースポットと言われるカンボジアですが、この密林のスピリチュアル感はなんとも言えないものがありました。宮崎駿監督もなにか特別なものを感じたのでしょうか。
カンボジア人は甘いものが大好きだそう。カンボジアンスイーツは、かぼちゃやサトイモ、あずき、緑豆、寒天など体にいい栄養満点の素材が使われます。これは、カンボジアンスイーツの定番、「かぼちゃプリン」です。かぼちゃの中に、アヒルの卵で作ったココナッツミルク風味のプリンが入っています。ヤシの葉をくり抜いたグリーンとがぼちゃのイエローがなんともマッチ。南国のお花を添えると、完璧なフォトジェニック!
カンボジアの内戦が終結して28年になりますが、遺跡周辺では今もなお地雷撤去作業が行われているなど、戦争の傷跡があちらこちらで見られます。戦後74年を迎えた日本に置き換えてみると、カンボジアは昭和48年頃。地方都市は昭和20年代後半の印象です。1999年4月にASEANに正式加入後は、海外からの投資が増加。2004年10月のWTOに加盟後は首都プノンペンを中心に急激な経済成長を遂げています。そして、今回の旅で非常に強く感じたのは、中国のプレゼンスの大きさでした。
内戦、地雷、貧困、食糧難、自然災害、異常気象、ジェンダー格差、教育、近年の経済成長率は平均7%前後、でも平均寿命は60歳、法律なんてあってないようなもの、今でも薪でご飯を炊く、蛇も食べる。
日中47℃にもなり、池は干上がり、干ばつで渇水が著しく、主要産業の米がうまく育っていないそうなのです。世界で記録的な猛暑が続き、世界経済に打撃を与えいる報道がされていますが、発展途上国への打撃は特に深刻なものとなっているのです。
生まれた国が違うだけなのに、同じ人間なのに、こんなにも生きてきた時代背景が違うものなのか…と私の環境すべてが幸せに思えました。
世界が抱える課題、まさにSDGsの縮図のような国カンボジア。SDGsは、「誰一人取り残さない」持続可能で多様性と包摂性のある社会の実現のために、2030年までを期限とする国連が定めた17の国際目標です。
今回の旅は、”SDGs×ビジネス”のヒントを見つける目的がありました。
私も行動に移りたいと思います。
参考資料
外務省ホームページ
国連ホームページ
地球の歩き方2019~20 アンコール・ワットとカンボジア
更新日:2019.8.22